心臓血管外科このページを印刷する - 心臓血管外科

TEL / 0827-34-1000(内線3005)

概要

当科は、昭和44年4月に開設されて以降、岩国市の地元医療圏はもちろんのこと、広島県、島根県と幅広い地域から様々な患者さんを受け入れてきました。医療は日々進歩していきますが、新しい技術を取り入れながらも、確かな技術に裏打ちされた最良の治療を提供することで、患者さんが元気に退院されることを最大の使命と考えています。手術室、集中治療室、一般病棟、リハビリテーション科、栄養科、薬剤科、検査室など様々な分野のスタッフも思いを同じくし、一丸となって治療に取り組んでいます。

近年、高齢化や併存疾患(糖尿病、高度動脈硬化、慢性腎不全等)による重症症例が増加しています。心臓や血管の病気は、生活習慣病と密接に関わっている事が多く、手術だけではなく、食事療法、薬物療法、運動療法と幅広い分野でのバックアップが必要となります。当科は、手術を安全に受けて頂くだけではなく、退院後も質の高い生活が維持できるように努めております。
また弁膜症は、病気の認知度がまだまだ十分ではなく、発見が遅れ心不全となって見つかるケースも散見されます。場合によっては突然死を起こす可能性もある恐ろしい疾患であり、各地域で講演を行い、病気に対する啓発活動を行っています。

 

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ハイブリッド手術室について

平成25年3月の新病院への移転に伴い、最新のハイブリッド手術室の稼働を開始しました。ハイブリッド手術室とは、手術室に据置型の血管造影装置を統合させたものです。このハイブリッド手術室で心臓・大血管手術だけでなく、胸部大動脈瘤や腹部大動脈瘤に対するステントグラフト治療や、閉塞性動脈硬化症に対するカテーテル治療、急性動脈閉塞に対する血栓除去術などを行っています。



   




    

  

 

疾患の説明

1. 弁膜症

心臓は血液を全身に送り、心臓の弁は血液の流れが一定方向に流れるために逆流防止弁の役割をしております。心臓弁膜症は何らかの原因で心臓の弁が固くなり、開きが悪くなる「狭窄症」、弁の閉まりが悪くなり逆流が起きる状態を「閉鎖不全症」に分けられ、それぞれの障害が原因で心臓に負担がかかった状態のことをいいます。
症状としては、動いた時にすぐに息が切れたり、下肢がむくんだりします。最終的には心臓が全身に血液を送る力が低下する心不全という状態となり、最悪突然死をきたすこともあります。 心臓の弁の狭窄症や閉鎖不全症が重度となると、手術を行わない限り改善することはありません。

(1) 大動脈弁狭窄症

大動脈弁は心臓の出口に位置する逆流防止弁であり、それが固く開きにくくなった状態を大動脈弁狭窄症といいます。弁が開きにくいため、心臓から全身に血液を送るためには大きな労力が必要となり、心臓に負担がかかっていきます。重症となると突然死を招く恐れのある恐ろしい疾患です。

(2) 大動脈弁閉鎖不全症

大動脈弁が完全に閉じないために、全身に送り出した血液の一部が再び心臓に戻ってくることになるため、心臓は余分な仕事が必要になります。原因としては、リウマチ熱の後遺症、加齢に伴う変化、生まれつきの弁の異常(先天性二尖弁)など大動脈弁そのものの変化から生じるだけでなく、「胸部大動脈瘤」や「マルファン症候群」といわれる大動脈の病気によっても生じます。

(3) 僧帽弁狭窄症

左心房と左心室の間の逆流防止弁が、子供の頃のリウマチ熱などが原因で十分に開かなくなる病気です。左心房の血液は左心室にスムーズに流れなくなり、その結果、左心房に負担がかかり、左心房が大きくなります。大きくなると「心房細動」といわれる不整脈が出たり、左心房内に血液がよどんだりするようになり、場合によっては血の塊(血栓)ができ、脳卒中の原因となることもあります。

(4) 僧帽弁閉鎖不全症

僧帽弁は左房と左室の間にある逆流防止弁であり、様々な原因によりその役割が果たせなくなり逆流を起こした状態を僧帽弁閉鎖不全症といいます。左房と左室の間で血液が行ったり来たりを繰り返すため、全身に血液を送るために心臓に余分な労力がかかります。僧帽弁狭窄症と同様に「心房細動」が起きることがあります。

 

2. 狭心症、心筋梗塞

心臓は1日に約10万回休みなく拍動しており、その筋肉に血液を送っているのが「冠動脈(冠状動脈)」です。左前下行枝、左回旋枝、右冠動脈と3本の枝があり、それぞれが心臓の筋肉に栄養や酸素などを供給しています。しかしながら、年齢を重ねたり、生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満など)があったりすることが原因で冠動脈の血管壁にコレステロールがたまり、血管の内側がせまくなります。心臓を動かす血液が不足するほどせまくなってしまった場合は、動いた時に胸が痛くなったり、胸の圧迫感を感じたりするようになります。これが狭心症であり、長くても15分程度で症状はなくなります。冠動脈がさらに狭くなって血管が詰まってしまうと、その血管が栄養している部分の心筋細胞が壊死して、胸の痛みや圧迫感が持続し治まることはありません。この状態を急性心筋梗塞と呼びます。

経皮的冠動脈形成術(カテーテル治療)の発達により、患者様の負担が少なく、短時間で閉塞した冠動脈の再開通が可能となり、当院循環器内科でも多くの治療実績を積み重ねてきました。しかしながら、糖尿病などの合併や、病変が多枝にわたる、若年者、技術的に経皮的冠動脈形成術の困難な症例などは、手術(冠動脈バイパス術)を行う方がより良い治療成績が期待できます。

冠動脈バイパス術は、脚、胸、腕または腹部から健康な血管の一部を採取し、この血管を冠動脈の閉塞部分の先につなぎます。血液の流れが閉塞動脈を迂回することで、冠動脈へ流れる血流の新たな経路をつくる手術です。

当科では、主に心拍動下冠動脈バイパス術(人工心肺を使用せず、心臓を動かした状態で冠動脈にバイパスする)を行うことによって、人工心肺を使用した際の脳梗塞や出血のリスクを低下させることで、低侵襲でより安全な治療を提供しています。

治療方針に関しては、循環器内科と毎週カンファレンスを行っており、中には経皮的冠動脈形成術(カテーテル治療)と冠動脈バイパス術を併用するハイブリッド治療を行うこともあります。

 

3. 胸部・腹部大動脈瘤

大動脈瘤は、高血圧や動脈硬化などが原因で大動脈が太くなったものです。大動脈には心臓を出て横隔膜まで走行する胸部大動脈と、横隔膜から下方に向かって下腹部まで走行する腹部大動脈があり、それぞれ太くなると胸部大動脈瘤、腹部大動脈瘤という状態になります。太くなると壁は薄くなって弱さを増し、短時間に太くなりやすくなります。そして放置していると最後には破裂して大出血し非常に危険です。この病気の特徴として、急速に大きくなるときには痛みを感じる方もいますが、基本的には症状がありません。そのため破裂してはじめてわかる方もおられる恐ろしい病気です。ほとんどの原因が高齢と 動脈硬化によるものです。高血圧を有する方に発生することが多く,中年~高齢の男性に好発し,大動脈瘤患者の10~25%程度で他の動脈硬化性疾患(冠動脈硬化症や脳動脈硬化症、下肢動脈の閉塞性動脈硬化症など)を合併します。

従来の手術治療は、開胸もしくは開腹して、動脈瘤を切開して人工血管を縫合する方法で治療を行います。この手術方法は確立した手術方法で、治療の成績も安定しています。

ただ、心臓、肺、脳などの他の臓器の病気を合併している場合には死亡を含む合併症のリスクがより高くなります。
ステントグラフト内挿術は鼠径部の動脈からアプローチして人工血管を内側から動脈瘤に挿入する方法です。この治療は患者さんの負担が従来の開胸・開腹手術に比較して軽く、心臓、肺、脳などの他の臓器の病気を合併して、手術のリスクが高い患者さんにも治療を行えるという利点があります。またほとんどの患者さんで翌日から歩行を開始し、食事摂取もできるようになります。
胸部大動脈瘤へのステントグラフト内挿術は施行できる部位が決まっており、遠位弓部大動脈瘤と下行大動脈瘤に対して施行しています。

解剖学的に形態が合わない動脈瘤の方にはステントグラフト治療は出来ません。造影CT(3次元構築したCT)で形態を評価して可能かどうかを判断します。また、腎機能の悪い患者さんは造影剤によってさらに腎機能を悪化させる可能性があり、ステントグラフト治療できないこともあります。その場合はリスク評価を行い従来の手術方法をお勧めしております。



 

4. 下肢静脈瘤

(1) 下肢静脈瘤とは

下肢の血液は、重力に逆らって心臓に戻ります。そのため静脈には血液の逆流を防ぐために弁がついており、この逆流防止弁により逆流することなく血液が心臓へ戻ることができます。しかし、この逆流防止弁が壊れると、血液は逆流してしまい脚の下の方に血液が溜まり、静脈が瘤のように膨らみ、この状態を下肢静脈瘤といいます。立ち仕事、妊娠、遺伝、加齢といった原因で悪化することが知られています。

(2) 下肢静脈瘤の症状

静脈瘤はゆっくり進行し、年単位から十年単位で徐々に進行します。初めは無症状で、他人から指摘されて気付く程度ですが、徐々に重だるさ、むくみ、寝ているときに足がつるなどの症状が出現します。進行すると、静脈瘤の中に血栓できることで、痛みをきたす血栓性静脈炎を起こしたり、なかなか治らない湿疹ができてかゆくなったり、皮膚が茶褐色に変色したりします。最悪の場合、皮膚に潰瘍を形成したりします。

(3) 治療法

1. ストリッピング手術・結紮術

下肢静脈瘤の根治的治療として、古くから行われている歴史のある治療方法です。局所麻酔下に下肢静脈瘤を抜き取る、または結紮する手術方法です。

2. 血管内焼灼術

2011年より保険適応となり、低侵襲で安心な治療として普及している治療法で、当院では2013年3月より導入しております。現在は高周波を使用した血管内焼灼術を行っており、弁の壊れた静脈の中に先端部分に金属コイルがついたカテーテルを挿入して、高周波を流すことで発熱し静脈を熱変性させて閉塞させます。ストリッピング手術と比較しても遜色ない治療効果が得られ、侵襲も少なく、手術後の痛みもほとんどなくすぐに歩行可能です。さらに、通常は皮膚を切ることなく治療を行えます。(病状に応じて皮膚を1-2㎝切ることもあります)。

当院では、ストリッピング手術、血管内焼灼術いずれも1泊2日の入院治療となります。これは術後一晩様子をみることで何らかの合併症が起きた時に、すばやく対応するためです。手術後は日常生活に関して制限は全くありません。

 

心臓血管外科 手術実績

岩国医療センター心臓血管外科 岩国医療センター心臓血管外科 岩国医療センター心臓血管外科

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心臓血管外科 治療実績

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公開資料

●心臓弁膜症-「大動脈弁置換術」(外部サイト)
●大動脈弁狭窄症の早期発見と早期治療の重要性
●心臓血管外科医を志す君へ

 

岩国医療センターだより 『心臓血管外科』

過去に広報誌「岩国医療センターだより」にて掲載しました「心臓血管外科だより」等、心臓血管外科関連の記事を閲覧できます。

●岩国医療センターだより「心臓血管外科」

 

外来診療案内 心臓血管外科

 
  備考
午前   -    小川 達也
前田 聖和    
       -    (完全予約制)
山本 剛
小川 達也
前田 聖和      
・下肢静脈瘤外来
 火曜
・大動脈瘤外来 金曜
・弁膜症冠動脈疾患
 外来 火曜         
午後    -  
 

 

心臓血管外科 担当医師の紹介

 

山本 剛(やまもと つよし)/心臓血管外科医長

◇専門領域/心臓血管外科領域、動脈瘤に対するステントグラフト治療、血管内治療
◇卒年/岡山大学医学部
 平成12年卒

▼資格等

  • 岡山大学医学部医学科 臨床教授
  • 医学博士
  • 日本外科学会 外科専門医・日本外科指導医
  • 日本心臓血管外科学会 心臓血管外科専門医・修練指導医
  • 胸部ステントグラフト 指導医
  • 腹部ステントグラフト 指導医
  • 日本血管外科学会 血管内治療認定医
  • 臨床研修指導医

▼所属学会

  • 日本外科学会
  • 日本臨床外科学会
  • 日本胸部外科学会
  • 日本心臓外科学会
  • 日本循環器学会
  • 日本血管外科学会
 

大谷 悟(おおたに さとる)/心臓血管外科特別顧問

◇専門領域/虚血性心疾患、弁膜症、大動脈疾患、心臓血管外科一般、心臓血管外科領域の手術、弁膜症手術、大動脈手術(動脈瘤など)、心房細動に対する手術 
◇卒年/島根医科大学医学部 平成10年卒
 岡山大学大学院卒 医学博士
 

▼資格等

  • 三学会構成心臓血管外科専門医認定機構 心臓血管外科専門医・心臓血管外科修練指導者 
  • 日本外科学会 認定医・外科専門医・外科指導医
  • 下肢静脈瘤に対する血管内レーザー焼灼術の実施基準による実施医
  • 下肢静脈瘤に対する血管内レーザー焼灼術の実施基準による指導医
  • 臨床研修指導医
  • 日本循環器学会 中国支部評議員
  • 日本血管外科学会中国四国地方会評議員

▼所属学会

  • 日本外科学会
  • 胸部外科学会
  • 心臓血管外科学会
  • 日本血管外科学会
  • 日本循環器学会
 

小川 達也(おがわ たつや)/心臓血管外科医師

◇専門領域/心臓血管外科一般 
◇卒年/香川大学
 平成29年卒
 

▼資格等

  • 下肢静脈瘤に対する血管内治療実施基準による実施医
  • 日本外科学会 外科専門医
  • 胸部ステントグラフト 実施医
  • 腹部ステントグラフト 実施医・指導医

▼所属学会

  • 日本外科学会
  • 日本血管外科学会
  • 日本心臓血管外科学会
 

前田 聖和(まえだ まさかず )/心臓血管外科レジデント

◇卒年/岡山大学令和4年卒
 

▼所属学会

  • 日本外科学会