外科・消化器外科・乳腺外科
概要
外科では、エビデンス(事実)に基づいた標準的治療を行うとともに、最新の医療を行うことを目標に掲げ、特に身体の負担を軽く機能を温存できるように心がけています。
創の痛みを少なくし早く社会復帰できるようにしており、美容面にも配慮しています。
抗がん剤の治療や、がん末期の緩和医療にも積極的に取り組んでいます。
総合医療施設として、外科疾患以外の様々な合併症を持たれる患者さんにも、安心して治療を受けていただける体制をとっているのも特徴のひとつです。
そして患者さんには、正確な情報をわかりやすく伝えることを心がけています。
また、教育研修病院として、臨床医学教育に貢献できることに喜びを感じています。
豊富な症例をもとに、論文発表や学会報告、講演活動を行い、国内外への情報発信を行っています。
主要診療内容
2023年度版 新規作成中
大腸領域
大腸領域
大腸癌とは?
大腸がんとは大腸の粘膜から発生する悪性腫瘍で、その発生部位から「結腸がん」と「直腸がん」に分けられます。
大腸がんは日本人が比較的かかりやすいがんの一つで、2018年の調べでは罹患数(かかった数)で男女合わせると日本人に最も多いがんです。罹患数が多いことから死亡者数も多いのですが、大腸がんは消化器がんの中で最も5年相対生存率(治療でどのくらい生命を救えるかを示す指標)が高く、適切に治療すれば70%以上の人が5年生存を期待できます。

山口県は県別のがん検診受診率で全国ワースト1位です。
大腸がんは日本人に多く、早く治療すれば十分治る可能性のある病気ですが、当然進行すると治療が困難になる場合もあります。
大腸がんは放置すると腸閉塞となったり穿孔(穴があく)して腹膜炎になったりして、腹痛や嘔吐を来し、つらい自覚症状を伴う可能性があります。検診を受診して早期に適切な治療を受けることが、生活の質を保つうえでも重要です。
参考文献:がん情報サービス がん検診受診率
元データ:がん検診に関する統計データのダウンロード 4.がん検診受診率(国民生活基礎調査)
概要
- 当院では大腸がん手術を開腹、腹腔鏡、ロボットなどを用いて手術を行っております。
手術は、内視鏡外科学会技術認定取得医である谷口を中心に各外科スタッフで診療にあたります。近年は、開腹手術の割合は減少傾向で、80%以上の症例で鏡視下手術を行っておりますが、2022年からは直腸癌に対するロボット支援下手術も開始しており、その割合は増加傾向です。 - また、術後の患者さんを中心に化学療法にも力を入れており、外来や入院で患者さんのニーズや全身状態、病気の状態や遺伝子情報に基づき、患者さんにとって最善の治療を共に模索しています。当院は岡山大学を中核病院としてがんゲノム医療連携病院に指定されており、従来の治療法で限界を迎えた患者さんにはがんゲノムプロファイリング検査が可能で、治験や臨床試験で何か治療ができないかを検討することができます。
主な診療内容
- 主に結腸がん、直腸がんに対する手術・化学療法を行います。低侵襲治療として大腸がんに対する腹腔鏡手術や直腸がんに対するロボット支援下手術を行っています。
- 山口県東部地区を中心に、県北や広島県西部にかけて広い医療圏をカバーし、手術や化学療法など全国的にも遜色ない医療を心掛けて治療を行っています。
- 誠に申し訳ありませんが、痔や直腸脱などの良性疾患や、クローン病・潰瘍性大腸炎などといった炎症性腸疾患などについては当院では治療が難しい場合があり、他院にご紹介させていただく場合があります。
手術
腹腔鏡手術
腹腔鏡手術は従来の開腹手術と比較して、傷が小さく出血量が少なく、術後の回復が早いことが知られています。当院でも大腸がん手術については、80%以上を腹腔鏡手術で施行しています。
術中の癒着の程度やがんの進行具合、腸閉塞などによる腸管拡張の程度などによっては開腹手術が必要であったり、腹腔鏡から開腹移行となったりする場合もありますが、近年ではまれです。
岩国医療センターでは、山口県内には少数しかいない大腸領域で内視鏡外科技術認定取得医が執刀または手術監督することで、安全でクオリティの高い手術をご提供することができます。
ロボット支援下手術
大腸領域におけるロボット支援下手術は平成30年から直腸領域で保険収載されました。手術支援ロボット(Da Vinci® , Intuitive Surgical社)を用いて手術を行います。基本的には腹腔鏡手術と同じように小さい傷で手術を行います。
ロボット手術は全自動の手術ではなく、術者が同じ手術室内でサージョンコンソールという機械に向き合って患者さんの体とドッキングしたロボット(ペイシャントカート)の操作を行って手術をすることになります。ロボット手術は手振れが少なく術者の思い通りに動く多関節の器械を用いて手術を行うため、腹腔鏡手術では難しい狭い骨盤内を安定した視野で確実な手術ができるというメリットがあります。当院でも令和4年から直腸領域で開始して、現在まで安全に継続しています。
山口県下の大腸領域で導入している施設はまだ数施設であり、当院は県下でも先駆けて導入している施設のひとつです。
化学療法
切除不能進行大腸がんの予後は5FUが出現する前、1950年代頃には約半年程度でしたが、昨今の化学療法の進歩により現在では3年を目指すようになりました。
大腸がんの化学療法は日進月歩で、消化器がん分野で最も進歩しているといっても過言ではない一方で、使用できる薬剤や推奨されるレジメンが非常に細分化されており、日常的に大腸がん化学療法を施行していない医師には煩雑でわかりにくいものとなっております。
現在当科では大腸がんで手術を受けられた患者さんを中心に、それぞれの元気さや治療の目的、癌の局在、遺伝子型などに応じて多岐にわたる化学療法を継続的に実施しております。
大腸がんに対する化学療法は比較的効果が期待できるため、根治切除がいったん困難と考えられた症例でも化学療法を行うことで切除が可能となる患者さんもおられます。当然、ガイドラインに則った治療は全国のハイボリュームセンターと遜色なくご提供が可能ですし、当院は岡山大学を中核としたがんゲノム医療連携病院に認定されており、がんゲノムプロファイリング検査を行うことで、標準治療から逸脱した患者さんでも約10%に新規治療の治験や臨床試験のチャンスをご提案できる体制が整っています。
治療実績
2021年はCOVID-19の影響で落ち込んだ手術件数も2022年は持ち直しました。
2022年末から直腸疾患に対するロボット手術を開始しました。安全に開始して軌道に乗せるためペースは少ないですが徐々に増加傾向です。
開腹手術は腸閉塞や穿孔など緊急手術症例や多臓器に浸潤する高度進行がんのみを適応としておりますが、2022年は17.8%でした。
今後はさらに腹腔鏡やロボット手術といった低侵襲手術を進めていく予定です。
大腸癌手術件数
過去10年間の大腸癌症例の長期予後についてを示します。
5年全生存率はStage I 91.8%、II 82.0%、III 80.4%、IV 22.1%であり、5年疾患特異的生存率はStage I 98.2%、II 91.2%、III 88.3%、IV 25.2%でした。全がん協のデータと比較しても遜色ない長期予後です。
大腸がんで当院を受診するには?
- 初診日は水・金曜日を中心にお受けしております。お急ぎの場合はその限りではありませんので当院外来にご相談ください。
- 紹介していただくには、かかりつけの先生から当院地域連携室を介して受診予約をおとりください。かかりつけの先生からの診療情報提供書 (紹介状) があれば、よりスムーズです。
- (かかりつけの先生へ)大腸がん関連で外来予約枠がいっぱいであったり、より個別に対応を要することなどあったりしましたら、外科 谷口宛てにご一報いただければ可能な限り対応いたします。
お問い合わせ
平日10時~16時には外来スタッフ(看護師やメディカルアシスタント)にご連絡いただければ可能な限り対応いたします。主治医や担当医が不在であったり手術中であったり即座に対応できない場合は後日ご連絡する場合があります。
なにかご不明な点やご質問などありましたらお気軽にお申し付けください。
胃がん領域
胃がん領域
胃がんの治療
当院は山口県東部唯一の、日本胃がん学会 胃がん認定施設です。
胃がんの治療には、手術治療、内視鏡治療、薬物治療など様々な治療法がありますが、どの治療法を選ぶかについては専門医の判断が必要になります。がんの状態によって、手術治療と内視鏡治療、手術治療と薬物治療など、治療法を組み合わせて行う場合もあります。
胃がんの手術
胃がんの手術治療には、従来から行われている開腹手術(お腹を大きく開けて行う手術)と、低侵襲手術(キズの小さな手術、体に負担の少ない手術)があります。
低侵襲手術には、腹腔鏡手術(お腹に小さな穴を何か所かあけて、長いハサミやピンセットを用いて手術をする)とロボット支援下手術(お腹に小さな穴を何か所かあけて、ロボットのハサミやピンセットを人間が操作して手術をする)があります。
当院では、開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット支援下手術のいずれも対応可能ですが、どの手術方法が適しているかは専門医と相談しながら決めていきます。
胃がん手術までの流れ
手術までには、外来でさまざまな検査を行います。
胃がんの状態(胃がんの位置、リンパ節転移があるかどうか、など)を調べるための胃カメラ検査やCT検査を行い、胃をどれくらい切除するかなど、手術内容について相談します。また、全身の体力チェックの検査(心臓・肺・肝臓・腎臓などの機能の検査)を行って、手術の負担に体が耐えられるかを調べます。術後に肺炎や痰詰まりを起こさないよう、手術直前まで、呼吸の力をきたえるリハビリを自主練習します。呼吸のリハビリを行うことで、手術後に深呼吸や痰を出す訓練をすることができます。
タバコを吸っている方は禁煙が必要です。
また、虫歯や歯周病がある場合は、口の中の菌が肺に入ることで手術後の肺炎をおこしやすくなりますので、かかりつけの歯科で口のクリーニングをしてもらっておきましょう。
胃がん手術の入院の流れ
入院期間は、開腹手術では2週間程度、腹腔鏡手術・ロボット支援下手術では10日程度になります(詳しいスケジュールについては、外来を受診された際、スケジュール表をさしあげて説明いたします)。通常は、手術日の前日に入院となります。手術後は、体の回復の具合をみながら、飲水→重湯→3分粥→5分粥→7分粥→全粥、と徐々に食事内容が変わっていきます。腹腔鏡手術やロボット支援下手術などのキズの小さな手術では、手術の翌日から、立つ練習や歩く練習をすることができます。
食事開始時と退院時のタイミングで、栄養士からの食事療法指導があり、胃の手術後の食べ方のコツを学びます。
退院後は、1~2週間くらいの療養期間を過ごし、徐々に日常生活に戻っていきます(仕事をされている方は、術後1か月程度の休みをとることをおすすめしています)。
手術後の体調のチェックや、がんの再発がないかを調べる検査のため、退院後も定期的に外来に通院することになります。
胃がん手術後の食事療法
胃がん手術後の食事のコツは、ゆっくり時間をかけて、よく噛んで食べることです。手術前とちがい、食べ物をためる能力が落ちるので、30分以上かけて食べましょう。
1回の食事量を減らして、その分、食事の回数を増やすこと(朝・昼・夕の食事に加え、10時と3時に軽い食事やおやつを食べる、など)も栄養摂取には大切です。唾液の中にも消化酵素が含まれていますので、よく噛んで、唾液と混ぜることで、消化がよくなって腸の負担を軽くすることができます。
手術後によく噛むことが大切になるので、手術前には、かかりつけの歯科を受診し、虫歯や歯周病など口の中のチェックとクリーニングをしてもらっておきましょう(入れ歯をお持ちの方は、入れ歯の調子もみてもらいましょう)。
退院するときに栄養士から食事療法の説明がありますが、自宅で過ごしてみて気になる点が出てきたら、外来通院のときにまた相談することもできます。手術後、半年くらいたつと、食事のコツをつかんできますので、あせらずに気長に食事療法に慣れていきましょう。
当院での胃がん手術の治療成績
過去10年間の、当院での胃がん手術の治療成績をお示しします。
5年生存率は、全国がんセンター協議会(全がん協)のデータと比較しても良好な成績でした。
当院を受診するには
腹腔鏡手術は、キズの小さな手術・体の負担が少ない手術ですが、お腹の中で行うこと(胃切除+リンパ節郭清)は、開腹手術で行うことと同じことをしています。小さなキズから精密な手術を行うため、高度な技術が必要で、専門の資格をもった外科医(日本内視鏡外科学会認定による腹腔鏡下胃がん手術の技術認定取得医)の執刀または手術指導が必要です。
当院は、山口県東部で唯一、日本内視鏡外科学会認定による腹腔鏡下胃がん手術の技術認定取得医が在籍している病院です。そのため、ほとんどの胃がん手術を腹腔鏡手術で行っています。
胃がんと診断されたら、また、胃がんについて何か心配なことがあれば、当院外来へご相談ください。かかりつけの先生がいらっしゃる場合は、かかりつけの先生から当院の地域連携室を介して、受診の予約をとることができます。
食道がん
食道がん
食道がんの特徴
食道がんは予後が悪く治りにくい癌の一つであります。近年様々な化学療法剤が開発され、なかでも免疫チェックポイント阻害剤(簡単にいうと免疫細胞が癌細胞を攻撃するのを助ける薬)が2021年から保険適応となり治る可能性が拡がった癌になりつつあります。
しかし今日でも食道がんの治療成績は悪く5年生存率(治癒する確率)は根治手術後でも4割程度です。特に進行がんの場合、手術前に化学療法を行うことにより病期を少しでも下げて(ダウン ステージ)根治手術を行い治癒する可能性が少しでも高めるようにします。
食道がんの根治手術
食道がんの発生部位のうち一番多いのは胸部の食道がんです。以下は胸部食道がんに対する手術について述べます。
胸部食道癌のなかでも進行がんの場合一般的にリンパ節転移が胸部 腹部 頸部へ広範囲にしかも早期から起こすことが知られています。胸部食道亜全摘(胸部・腹部の食道を切除します)とともに胸部 腹部 頸部3領域のリンパ節郭清を行います。消化器がんの手術のなかでも患者さんの体への負担(手術侵襲といいます)は相当に大きい手術です。
当院では2013年より胸部操作には胸腔鏡を腹部操作には腹腔鏡をいち早く取り入れ低侵襲手術(体に負担の少ない手術)を行って参りました。
具体的には腹臥位胸腔鏡下食道亜全摘術(うつ伏せの状態で鏡視下に胸部・腹部食道を切除する)および3領域リンパ清郭清が基本手術手技です。腹部操作では腹部のリンパ節の郭清をおこなうとともに食道切除後の新たな消化管再建経路を作成する目的(新たに食べ物の通り道を作成する目的)で胃を図のように切除し胃管を作成しその胃管を頸部まで挙上後、頸部食道と胃管の吻合を行います(図2、3)。
以上の手術を体への負担を少なくするために胸部操作・腹部操作ともに胸鏡視下手術を取り入れております(図4)。
早期がんの場合、術前化学療法はおこなわず手術を優先します。また頸部のリンパ節郭清を省略する場合があります。
手術の併発症
食道がんの主だった術後併発症には反回神経麻痺、縫合不全、肺炎があります。
それぞれに対する当科での取り組みの一部をご紹介いたします。
反回神経麻痺
反回神経とは声帯の運動を司っている神経で左右1本ずつあります。食道がんの場合その反回神経周囲のリンパ節に癌の転移を高率に起こすことがわかっております(約30%)。したがってその部位のリンパ節郭清をしっかりとおこなわなければなりませんが、その神経を無理に触ったり牽引したりすると神経が麻痺してしまいその結果手術後に嗄声(声がかすれる)を起こしたり嚥下(飲み込み)が不良となったり重篤な肺炎を併発することがあります。そのような神経の麻痺を予防しつつ確実にリンパ節郭清を行うことを目的に当科では持続的反回神経モニタリングシステムを使用し良好な成績を収めております。(図5、図6)
縫合不全
消化管と消化管をつないだ場所(吻合部)がうまくくっつかずに消化液が吻合部の外に漏れることを縫合不全といいます。食道癌の場合、頸部食道と胃管を吻合しますが胃管先端の血流が低下する傾向にあり縫合不全を起こすことがあります。
当科では胃管先端の血流を術中にICGテストで可視化することにより胃管血流のベストな部位で吻合し良好な成績を収めております。(図7、図8)
肺炎
胸部操作を胸腔鏡で行うようになり肺炎自体が減少しました。しかし高齢な方では肺炎あるいは無気肺を起こしやすいため呼吸リハビリチームとともに更なる工夫を行っております。
手術前後の経過
手術前よりリハビリ科による呼吸リハビリと栄養科による栄養指導を開始し体力と栄養状態の強化を行い手術に臨んでいただきます。またそれらは手術後も継続します。禁酒禁煙は絶対に必要です。
当科では早期退院・早期社会復帰を目標にし、手術後週に1回リハビリ科、栄養科、薬剤科、医師、看護師で症例検討を行っております。
入院期間は手術後おおよそ2週間を目標にします。患者さんご本人の年齢、体力、術後の併発症により入院期間が長くなる可能性はありますが年々短縮傾向にあります。(図9 当科の術後在院日数。)
今後の課題
当科へは岩国市はもとより西は下松・光方面、東は大竹方面、北は山口県北、南は大島・柳井・平生方面から患者さんが来られます。
高齢な患者さんが比較的多くまたある程度がんが進行したかたが多い特徴があります。進行食道がんに対しては手術のみでは予後の改善は望めません。先に述べました免疫チェックポイント阻害剤を含めた化学療法あるいは放射線療法を併用した集学的な治療が必要です。
当科では患者さんひとりひとりにあった治療方法の選択を行い丁寧な診療を心掛けております。
肝胆膵領域(2023)
肝胆膵領域
肝切除
肝切除件数を示します。2022年肝切除件数は減りました。
当院の特徴としてはやはり高齢の患者さんが多い事で、2022年に肝切除を受けられた方の平均年齢は73歳でありました。
下段は腹腔鏡手術の割合を示しておりますが、2021年からは半分以上が腹腔鏡下肝切除となっております。この傾向はもう少し続くと考えられます。
次に過去10年間の肝切除の原因疾患を示しております。
2022年は肝細胞癌が極端に減少しており、肝切除件数の減少の主な原因と思われます。肝細胞癌は肝炎ウイルスを原因とする事が多く、肝炎患者さんの減少が影響している事は間違いありませんが、生活習慣病として増加している非アルコール性脂肪肝を原因とする肝細胞癌の増加は最近の傾向ではあります。
また当科では胆嚢癌の症例が多かったのが、近年減少しており、こちらも肝切除件数の減少の原因のひとつと考えております。肝内結石もここ5年間見られなくなった疾患であります。原因としては内視鏡的治療の進歩が挙げられます。つまり内視鏡を用いて肝内の結石を除去する治療の普及です。
一方最近増えている疾患として肝内胆管癌があります。2013年から2016年まで4年間で1例だったのが2017年から2022年までの6年間に細胆管細胞癌も含めて15例と著明に増加しております。
肝内胆管癌は原発性肝癌では肝細胞癌に次ぐ頻度の疾患であります。特徴としては非常に予後の悪い癌で特にリンパ節転移を高頻度に認めるため手術では肝細胞癌と異なり、肝切除に加えてリンパ節郭清を必要とする疾患です。
近年増えている腹腔鏡手術ですが、下のように腫瘍を染めたり(左図矢印)、血流のある部分だけ染めたり(右図星印)するICG蛍光法という手技で、腫瘍の正確な位置を術中にリアルタイムに確認しながら過不足のない切除が出来るようになっております。技術や画像の進歩で術式が変化して来ております。
原発性肝癌の代表的疾患である肝細胞癌の当科での術後生存曲線を示します。
StageⅣBという進んだ病期の方の予後が良い結果となっておりますが、これは破裂肝癌といって発見時に肝細胞癌が破裂して腹腔内に散らばった状態の方で後に切除を行った方や肺転移を認めた方が肝切除後の治療に良く反応して長期生存された結果であります。肝細胞癌は有効な抗癌剤もでて来ておりますし、再発例でも予後は向上しつつあります。
膵切除
膵切除件数を示します。膵切除も2022年は若干減少しました。内訳は以下の通りです。
PP:膵部分切除
DP:尾側膵切除
MP:膵中央切除
PD:膵頭十二指腸切除
TP:膵全摘
膵頭十二指腸切除の平均出血量は目標としていた500mlを切り、輸血を必要とした症例は1例のみでありました。
下に膵切除術の疾患別推移を示します。最近の傾向としては膵癌や胆管癌といった膵頭十二指腸切除の必要な疾患の増加があります。
膵癌は実質臓器の中で最も予後の悪い癌で「21世紀に残された癌」とも言われております。日本の統計のうちで部位別がん年齢調整死亡率というのは男女とも膵癌が圧倒的高値で1位であります。
早期発見が難しい癌ではありますが、家族性や糖尿病、慢性膵炎といった危険因子は判っておりますので、これらに相当する方には毎年の検診をお勧めします。更に糖尿病になったばかりや以前からの糖尿病が悪化した時点などは特に膵癌発生と関与ありと考えられておりますから超音波やCTなどの検査が必要です。
当院消化器内科では超音波内視鏡を用いた生検による組織診を行っており、ほぼ全例正確な診断のもと手術を行っております。
当科での切除後の予後曲線を示しております。早期発見は難しいとはいえ、膵癌でもStageⅠの5年生存率は100%となっており、治る可能性があります。ただし膵癌と診断された場合、手術は治療の一端ですから、手術前後に抗癌剤治療を行います。
胆嚢摘出
当院での過去10年間の胆嚢摘出術の件数の推移を示します。ご覧のように殆どが腹腔鏡の手術でありますが、いまだに開腹となる症例もある程度あります。2022年の件数は96件でありました。
下段に96例の内訳を示しておりますが、緊急手術が36例ありました。緊急手術例の方が年齢が高く、手術時間も多く、在院日数も多いのが判ります。
緊急手術36例中腹腔鏡で出来たのは27例で9例が開腹手術となっております。
近年の急性胆嚢炎の手術としては手術困難例に対する回避手術がガイドラインに掲載された事が大きく影響しております。
図のように胆嚢を全部取るのが難しい場合には無理はせずに安全な部分で切除を行う事によって腹腔鏡でも完遂する事が可能となりました。
注意すべきは未だに1%に偶発胆嚢癌と云われる癌が見つかる事です。特に高齢者の急性胆嚢炎では癌の診断が難しく、取った標本で初めて癌が判明する事があります。1%というと少なく感じる方もおられるかも知れませんが、2022年当院で胆嚢摘出術を受けた方が96名ですからひとり癌が出ても不思議じゃない状況です。癌が判明した場合、色んな要素を検討して追加切除を行う事もあります。
当院は日本肝胆膵外科学会の認定する高度技能医修練施設であり、山口県では当院と山口大学の2施設のみであります。何か有れば気軽にご相談ください。
専門外来
専門研修プログラム
岩国医療センターだより 『外科・消化器外科・乳腺外科』
過去に広報誌「岩国医療センターだより」にて掲載しました「外科だより」等、外科・消化器外科・乳腺外科関連の記事を閲覧できます。
外来診療案内 外科・消化器外科・乳腺外科
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 備考 | |
---|---|---|---|---|---|---|
午前 |
青木 秀樹 |
勝田 浩 荒田 尚 (初診) 担当医不定 - |
田中屋 宏爾 荒田 尚 谷口 文崇 渡邉 めぐみ 毛利 謙吾 |
鳩野 みなみ 担当医不定 - |
荒田 尚 小川 俊博 梶岡 裕紀 三宅 英輝 土井田 進 |
・家族性腫瘍相談外来 (要予約) ・乳腺外来 水・金曜日9:00~11:00 乳腺外来紹介初診は原則 火・木曜日午前 (要予約) 紹介の有無を問わず、 予約外で来院された場合 は当日診療が困難な場合 があります。 ・ストーマ外来 木・金曜日午前 |
午後 | - | - | 鳩野 みなみ | 鳩野 みなみ |
外科・消化器外科・乳腺外科 担当医の紹介
田中屋 宏爾(たなかや こうじ)/外科・消化器外科・乳腺外科医師
◇診療科/外科
◇役職/院長
◇卒年/岡山大学 昭和63年卒業、
大学院医学研究科 平成5年修了
◇専門領域/消化器外科、家族性腫瘍
▼学会認定・資格 取得資格
- 日本外科学会 認定医・専門医・指導医
- 日本消化器外科学会 認定医・専門医・指導医
- 臨床外科学会 評議員
- 臨床遺伝専門医 指導医
- 日本遺伝性腫瘍 専門医・指導医・理事
- 大腸癌研究会家族性大腸癌委員会委員
- 日本家族性大腸腺腫症研究会世話人
- がん治療認定医機構 暫定教育医・がん治療認定医
- 日本癌治療学会 臨床試験登録医
- 臨床研修指導医
- 日本DMAT隊員
- 岡山大学大学院医歯学総合研究科 消化器・腫瘍外科部門 臨床教授
▼所属学会
- 日本外科学会
- 日本臨床外科学会
- 日本内視鏡外科学会
- 日本消化器外科学会
- 日本消化器病学会
- 日本胃癌学会
- 大腸癌研究会
- 日本大腸肛門病学会
- 日本癌学会
- 日本臨床腫瘍学会
- 日本癌治療学会
- 日本人類遺伝学会
- 日本遺伝カウンセリング学会
- 日本遺伝性腫瘍学会
- 家族性大腸腺腫症研究会
- The International Society for Gastrointestinal Hereditary Tumors (InSiGHT)
- 日本緩和医療学会
- 日本認知症ケア学会
青木 秀樹(あおき ひでき)/外科・消化器外科・乳腺外科医師
◇診療科/外科
◇役職/診療部長、手術部長
◇卒年/防衛医科大学校
昭和60年卒
◇専門領域/肝胆膵外科、消化器外科
▼学会認定・資格 取得資格
- 日本外科学会 指導医・専門医
- 日本消化器外科学会 指導医・専門医
- ICD制度協議会 インフェクションコントロールドクター
- 日本肝胆膵外科学会 高度技能指導医
- 日本がん治療認定医機構 暫定教育医
- Editorial board member of World Journal of Gastrointestinal Surgery
- TNT研修修了
- 医学博士
- 岡山大学医学部 臨床教授
▼所属学会
- 日本外科学会
- 日本消化器外科学会
- 日本肝胆膵外科学会
- 日本臨床外科学会
- 日本胆道学会
- 日本胃癌学会
- 日本外科感染症学会
- 日本内視鏡外科学会
勝田 浩(かつだ こう) /外科・消化器外科・乳腺外科医師
◇診療科/外科
◇役職/診療部長
◇卒年/岡山大学医学部 平成5年卒
◇専門領域/消化器外科
▼学会認定・資格 取得資格
- 日本外科学会 認定医・専門医
- 日本食道学会 食道科認定医
▼所属学会
- 日本消化器外科学会
- 日本外科学会
- 日本呼吸器外科学会
荒田 尚(あらた たかし)/外科・消化器外科・乳腺外科医師
◇診療科/外科
◇役職/外科医長
◇卒年/長崎大学医学部
平成11年卒
◇専門領域/一般外科、乳腺外科、IVR
▼学会認定・資格 取得資格
- 日本外科学会 認定医・専門医
- 日本乳癌学会 乳腺専門医
- マンモグラフィー検診精度管理中央委員会 読影医
▼所属学会
- 日本外科学会
- 日本消化器外科学会
- 日本臨床外科学会
- 日本肝臓学会
- 日本癌治療学会
- 日本乳癌学会
谷口 文崇(たにぐち ふみたか)/外科・消化器外科・乳腺外科医師
◇診療科/外科
◇役職/外科医長
◇卒年/岡山大学 医学部
平成18年卒
◇専門領域/消化器外科
▼学会認定・資格 取得資格
- 日本外科学会 専門医
- 日本消化器外科学会 専門医
- 日本内視鏡外科学会 技術認定取得医(大腸)
- 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
- 日本消化器外科学会 消化器がん外科治療認定医
- 手術支援ロボット「ダヴィンチ」術者認定資格
- 医学博士
▼所属学会
- 日本外科学会
- 日本消化器外科学会
- 日本臨床外科学会
- 日本内視鏡外科学会
- 日本遺伝性腫瘍学会
- 日本ロボット外科学会
渡邉 めぐみ(わたなべ めぐみ)/外科・消化器外科・乳腺外科医師
◇診療科/外科
◇役職/外科医長
◇卒年/群馬大学医学部
平成18年卒
◇専門領域/消化器外科
▼学会認定・資格 取得資格
- 日本外科学会 指導医・専門医
- 日本消化器外科学会 指導医・専門医・消化器がん外科治療認定医
- 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
- 日本内視鏡外科学会 技術認定取得医(胃)
- 手術支援ロボット「ダヴィンチ」術者認定資格
- 医学博士
▼所属学会
- 日本外科学会
- 日本消化器外科学会
- 日本胃癌学会
- 日本食道学会
- 日本大腸肛門病学会
- 日本内視鏡外科学会
- 日本ロボット外科学会
- 日本臨床外科学会
- 日本消化器病学会
- 日本腹部救急医学会
- 日本癌治療学会
- 日本ヘルニア学会
- LECS研究会
- 関東腹腔鏡下胃切除研究会
小川 俊博(おがわ としひろ)/外科・消化器外科・乳腺外科医師
◇診療科/外科
◇役職/医師
◇卒年/岡山大学医学部
平成21年卒
◇専門領域/消化器
▼学会認定・資格 取得資格
- 外科専門医
- 消化器外科専門医
- 消化器がん治療認定医
- 日本内視鏡外科学会 技術認定取得医(胃)
- 医学博士
- NST研修修了
▼所属学会
- 日本外科学会
- 日本消化器外科学会
- 日本内視鏡外科学会
- 日本癌学会
- 日本食道学会
- 日本胃癌学会
- 日本腹部救急医学会
梶岡 裕紀(かじおか ひろき)/外科・消化器外科・乳腺外科医師
◇診療科/外科
◇役職/医師
◇卒年/岡山大学医学部
平成22年卒
◇専門領域/肝胆膵外科、腹部救急、外傷外科
▼学会認定・資格 取得資格
- 日本外科学会 専門医
- 日本消化器外科専門医・指導医
- 消化器がん外科治療認定医
- がん治療認定医
- 外傷外科医養成研修修了
- インフェクションコントロールドクター
- 腹部救急認定医
- 抗菌化学療法認定医
- 日本肝胆膵外科学会評議員
- da vinci as a console surgean
- 肝胆膵外科高度技能専門医
▼所属学会
- 日本外科学会
- 日本消化器外科学会
- 日本肝胆膵外科学会
- 日本臨床外科学会
- 日本内視鏡外科学会
- 日本腹部救急医学会
- 日本肝臓学会
- 日本感染症学会
- 日本化学療法学会
鳩野 みなみ(はとの みなみ)/外科・消化器外科・乳腺外科医師
◇診療科/外科
◇役職/医師
◇卒年/島根大学医学部
平成23年卒
◇専門領域/乳腺外科
▼学会認定・資格 取得資格
- 日本外科学会 外科専門医
- 日本乳癌学会 乳腺専門医
- 乳房再建用エキスパンダー/インプラント実施医師
- 乳がん検診超音波検査実施・判定医師
- 遺伝性腫瘍専門医
- 医学博士
- マンモグラフィ読影認定医師
▼所属学会
- 日本外科学会
- 日本臨床外科学会
- 日本乳癌学会
- 日本遺伝性腫瘍学会
- 日本乳腺甲状腺超音波医学会
- 日本内分泌外科学会
三宅 英輝(みやけ えいき)/外科・消化器外科・乳腺外科医師
◇診療科/外科
◇役職/医師
◇卒年/山口大学医学部
平成29年卒
◇専門領域/消化器外科
▼学会認定・資格 取得資格
- 外科専門医
▼所属学会
- 日本外科学会
- 日本消化器外科学会
- 日本内視鏡外科学会
- 日本臨床外科学会
土井田 進(どいた すすむ)/外科・消化器外科・乳腺外科レジデント
◇診療科/外科
◇役職/レジデント
◇卒年/岡山大学医学部
令和2年卒
◇専門領域/消化器外科
▼所属学会
- 日本外科学会
毛利 謙吾(もうり けんご)/外科・消化器外科・乳腺外科レジデント
◇診療科/外科
◇役職/レジデント
◇卒年/岡山大学医学部
令和3年卒
◇専門領域/消化器外科
▼所属学会
- 日本外科学会