脳神経外科
概要
診療体制と実績
当科は脳神経外科医師9名(日本脳神経外科学会専門医6名、後期研修医3名)の体制で日々の診療にあたっています。山口県東部のみならず広島県西部から島根県南部の広域において24時間365日脳神経外科の救急患者さんに対応できる唯一の施設です。
年間入院患者数は約900人、年間手術件数は約400件あり中国四国地方において有数な施設の一つとなっています。常時1名以上が緊急の呼び出しに対応出来る様に待機し、診断から治療までを円滑に行える体制を整えています。
また当科医師9名による週4回のカンファレンスにおいて個々の患者さんの病状を十分検討したうえで治療方針や手術方法を決定しています。専門医6名は脳神経外科全般の診療に加えて、それぞれが得意とする専門分野を持っており、各分野で安心安全な医療が提供できるように日々研鑽を積んでおります。
脳卒中診療に関して
当院は日本脳卒中学会から「一次脳卒中センター」に認定されています。
一次脳卒中センターとは、地域の医療機関や救急隊からの要請に対して、24時間365日脳卒中や脳卒中を疑う患者を受け入れ、患者搬入後可及的速やかに診療・治療 (t-PA静注療法を含む)が開始できる施設です。さらに一次脳卒中センターの中でも地域において中心となる一次脳卒中センター(一次脳卒中センターコア施設)が診療実績や診療体制をもとに決められ、当院も一次脳卒中センターコア施設に認定されています。
医師の働き方改革に関する取り組み
国が働き方改革を推し進める中、2024年4月に時間外労働の上限規制が医師にも適応されました。
医師の長時間過重労働は、医師の健康への悪影響はもとより、業務遂行能力の低下や医療事故の誘因となることが多くの研究で示されています。
当科では安心安全な医療を提供するためには夜間休日の診療が少なくない脳神経外科医であってもより良いコンディションで診療を行うことは重要であると考え、医師の負担軽減の取り組みを積極的に行っています。その取り組みが国の指定する基準を満たすこととなり2021年4月より高い評価(休日・時間外・深夜加算1の取得)を受けています。
主要診療内容
脳血管障害
脳出血、脳梗塞など、さまざまな脳血管関連の疾患の治療を行っています。
クモ膜下出血、脳動脈瘤
脳動脈瘤に対する治療には、大きく分けて開頭クリッピング術と脳血管内手術(カテーテル手術)の二通りがあり、合わせて毎年40~50件前後行っております。どちらの治療を行うかは、それぞれの患者さまに適した方法を検討した上で決定しています。
破裂して救急来院された方のみならず、未破裂の脳動脈瘤に対しても破裂予防のための手術を行っています。脳ドックなどで未破裂の脳動脈瘤が偶然発見された場合には一度ご相談ください。
(上:開頭クリッピング術/下:カテーテル手術)
脳梗塞
脳梗塞は血管が閉塞してしまうことにより起こります。近年、血管につまった血栓を溶かす薬(rt-PA)の登場や脳血管内カテーテル治療の急速な発展(血栓回収療法)により、脳梗塞を発症して数時間以内ならば閉塞した血管を再開通させることが可能になっています。より迅速に安全な治療ができるよう院内体制を整備するとともに、症状回復のためスムーズにリハビリテーション治療に移行できるよう取り組んでいます。当院では脳血管内治療専門医が3名常勤医として在籍し、24時間いつでも脳梗塞に対応できるよう体制を整えております。
頭頚部血管狭窄
頚部や頭蓋内の血管狭窄病変に対して、脳梗塞予防のための手術を行っています。
頚動脈の血管狭窄に対しては頚動脈を切開して動脈硬化部分を直接切除する頚動脈内膜剥離術や血管内カテーテルで狭窄部を広げる頚動脈ステント留置術を行います。脳血管狭窄にはバルーン付きのカテーテルを用いた血管拡張術を行ったり、閉塞した血管に対しては他の血管をつなげるバイパス手術を行ったりすることがあります。
(下はバイパス手術の様子)
その他、脳神経外科で扱う脳血管疾患は脳動静脈奇形や硬膜動静脈瘻など多岐にわたります。検診や他疾患の検査を受けた際に上記のような脳血管疾患が偶然見つかることもあります。
手術をしたほうが良いのか、またはそのまま様子を見たほうがいいかなど、治療方針の相談についても脳神経外科外来で受け付けております。
脳腫瘍
髄膜腫、下垂体腺腫などの良性腫瘍から、膠芽腫などの悪性腫瘍に対して手術および放射線・化学療法を行っております。
当科には神経内視鏡技術認定医が2名在籍しており、神経内視鏡、ナビゲーションシステム、術中神経モニタリングなどの周辺機器を駆使して、より安全で低侵襲な手術を目指しております。
また膠芽腫に対する最新治療である腫瘍治療電場療法(オプチューン®)についても当科で対応可能です。
脊椎脊髄疾患
日本脊髄外科学会認定医2名(内1名は脊椎脊髄外科専門医)を中心に、脊椎脊髄疾患にも積極的に取り組んでおり、2024年は72件の脊椎脊髄手術を行っています。
超高齢社会を迎えた現在、高齢者の方の脊椎脊髄手術が増加してきております。
腰痛、手足のしびれ・痛み、歩行困難で悩んでおられるなら、高齢だからと諦めずに受診してみてください。また、3次救急病院である当院の使命として脊椎脊髄損傷患者さんの受け入れも積極的に行っています。呼吸循環など全身管理を必要とする重症の脊椎脊髄損傷患者さんは他科の協力のもと集中治療室で治療を行っています。
2022年4月に整形外科と協力して脊椎脊髄センターを開設いたしました。脊椎脊髄センターのページもご覧下さい。
頭部外傷
当院の医療圏は、高齢の方が多く、車社会であり、転倒や交通事故による頭部外傷が多く搬送されます。
生命に危険が及ぶ、外傷性頭蓋内出血に対する手術を、年間10~20件程度行っています (2024年は7件の緊急開頭術)。
また、軽微な頭部打撲後に、ゆっくりと脳の表面に血液が貯留してくる、慢性硬膜下血腫に対する手術(2024年は80件の穿頭洗浄術)も多数行っています。
機能的疾患
三叉神経痛や顔面痙攣は、頭蓋内で神経が血管に圧迫されることで起こります。当院では、薬物療法が効かない症例や副作用が強い症例などに対して、画像診断を加え、慎重に治療適応を選び、手術治療(微小血管減圧術)を行っています。2024年は2件の減圧術を行っています。
また、顔面痙攣、眼瞼痙攣に対しては局所注射(ボツリヌス)による治療も行っています。
手術実績
後期研修紹介
研修医のバイパストレーニング
(再生中にマウスをのせると一時停止、ボリューム等のボタンが表示されます。)
岩国医療センターだより『脳神経外科』
過去に広報誌「岩国医療センターだより」にて掲載しました脳神経外科関連の記事を閲覧できます。
外来診療案内 脳神経外科
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 備考 | |
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午前 | 荻原 浩太郎大塚 真司 伊丹 尚多 柿本 昂佑樹西浦 司 |
新患外来 (完全予約制) -
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日下 昇 大塚 真司 西 和彦 小谷 勇人 |
新患外来 (完全予約制) -
|
荻原 浩太郎 日下 昇 伊丹 尚多 田村 遼 西浦 司 |
脳神経外科 担当医師の紹介
荻原 浩太郎(おぎはら こうたろう)/副院長
◇専門領域/脊椎脊髄疾患
◇卒年/鳥取大学医学部 平成元年卒
▼資格等
- 日本脳神経外科学会 脳神経外科専門医・指導医
- 日本脊髄外科学会 脊髄外科認定医
- 日本脊椎脊髄病学会 日本脊椎脊髄外科専門医
- 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
- 日本神経内視鏡学会 神経内視鏡技術認定医
- 日本脳卒中の外科学会 技術指導医
- 日本脳卒中学会認定 脳卒中専門医・指導医
- 臨床研修指導医
- 医学博士
▼所属学会
- 日本脳神経外科学会
- 日本脳神経外科コングレス
- 日本脊髄外科学会
- 日本脊椎脊髄病学会
- 日本脊椎・脊髄神経手術手技学会
- 日本脊髄障害医学会
- 西日本脊椎研究会
- 日本神経内視鏡学会
- 日本脳卒中の外科学会
- 日本脳卒中学会
▼略歴・その他
海外留学:米国ミシシッピー大学脳神経外科(脳血管攣縮の研究)日下 昇(くさか のぼる)/脳神経外科医長
◇専門領域/脳血管障害、脳血管内手術、頭蓋底外科
◇卒年/岡山大学医学部 平成7年卒
▼資格等
- 医学博士
- 日本脳神経外科学会 脳神経外科専門医
- 日本脳神経血管内治療学会 脳神経血管内治療指導医
- 臨床研修指導医
- 身体障害認定医(肢体不自由)
▼所属学会
- 日本脳神経外科学会
- 日本脳神経外科コングレス
- 日本脳神経血管内治療学会
- 日本脳卒中学会
▼略歴・その他
受賞:日本脳神経外科学会奨励賞(血管の部) 平成18年大塚 真司(おおつか しんじ)/脳神経外科医師
◇専門領域/脳腫瘍、神経内視鏡
◇卒年/岡山大学医学部 平成8年卒
▼資格等
- 医学博士
- 日本脳神経外科学会 指導医
- 日本脳卒中学会認定 脳卒中専門医・指導医
- 日本神経内視鏡学会 神経内視鏡技術認定医
- 臨床研修医指導医
- 身体障害認定医(肢体不自由)
- 日本脳卒中の外科学会 技術認定医
▼所属学会
- 日本脳神経外科学会
- 日本脳神経外科コングレス
- 日本脳卒中学会
- 日本脳腫瘍学会
- 日本神経内視鏡学会
- 日本脳卒中の外科学会
▼略歴・その他
海外留学:カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)(平成14年‐16年)伊丹 尚多(いたみ ひさかず)/脳神経外科医師
◇専門領域/脳血管障害、脳血管内手術
◇卒年/岡山大学医学部 平成16年卒
▼資格等
- 医学博士
- 日本脳神経外科学会 脳神経外科指導医
- 日本脳神経血管内治療学会 脳神経血管内治療指導医
- 日本脳卒中学会認定 脳卒中指導医
- 身体障害認定医(肢体不自由)
- 臨床研修指導医
▼所属学会
- 日本脳神経外科学会
- 日本脳神経外科コングレス
- 日本脳血管内治療学会
- 日本脳卒中学会
- 日本脳卒中の外科学会
西 和彦(にし かずひこ)/脳神経外科医師
◇専門領域/脳血管障害、脳血管内手術
◇卒年/岡山大学医学部 平成26年卒
▼資格等
- 日本脳神経外科学会 脳神経外科専門医
- 日本脳神経血管内治療学会 脳神経血管内治療専門医
- 日本脳卒中学会認定 脳卒中専門医
- 身体障害認定医(肢体不自由)
- 臨床研修指導医
▼所属学会
- 日本脳神経外科学会
- 日本脳神経血管内治療学会
- 日本脳卒中学会
柿本 昂佑樹(かきもと たかゆき)/脳神経外科医師
◇専門領域/脳神経外科一般
◇卒年/岡山大学医学部 令和3年卒
▼所属学会
- 日本脳神経外科学会
田村 遼(たむら りょう )/脳神経外科レジデント
◇専門領域/脳神経外科一般
◇卒年/岡山大学医学部令和4年卒
▼所属学会
- 日本脳神経外科学会
小谷 勇人(こたに はやと )/脳神経外科レジデント
西浦 司(にしうら つかさ)/医師(非常勤)
◇専門領域/脊椎脊髄疾患、頭蓋底の手術、脳動脈瘤クリッピング
◇卒年/岡山大学医学部 昭和54年卒
▼資格等
- 日本脳神経外科学会 脳神経外科専門医
- 日本脊髄外科学会 認定医
- 日本脳卒中学会 専門医
- 身体障害認定医
▼所属学会
- 日本脳神経外科学会
- 日本脳神経外科コングレス
- 日本脊髄外科学会
- 日本小児脳神経外科学会
- 日本脳血管内治療学会
- 日本脊髄障害医学会
- 日本脳卒中の外科学会
- 日本脳卒中学会