泌尿器科
概要
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山口県東部地域および近郊医療圏域の患者さんに対して、個々の要望や価値観を取り入れながら都市部と遜色のない診療レベルの確保を目指しています。
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対象疾患は、尿路結石症などの泌尿器科プライマリケアから、後腹膜・泌尿器科領域の腫瘍性疾患に対する手術療法、がん薬物療法を取り扱っています。
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泌尿器科スタッフは5名で、外来・入院ともにチーム主治医制による診療を行っています。これは複数の医師で1人の患者さんを担当する方法です。チーム主治医制では診察ごとに担当する医師が代わりますが、刻々と変わる患者さんの病状を多方面の視点から診察することができるメリットがあります。
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泌尿器科では医療の質と患者の安心安全を確保するために、日々カンファレンスで医師間での患者情報の共有を行っています。そして、実際の診察に当たっては、病状をわかりやすく説明し、患者さんとよく相談しながら、最適な治療法を選択するように心がけています。
主な診療内容
- 腎・副腎・尿路性器疾患を扱っており、低侵襲治療・手術療法を行っています。
- 腹腔鏡手術から開腹手術まで、病態や希望にあわせた治療を選択しています。
- 外来検査
- 尿路腫瘍の診断では2013年4月より狭帯域光観察(NBI:Narrow Band Imaging.)内視鏡システムを導入し、鮮明な画像のもと診療を行っています。微小病変の早期発見が可能です。また、予約不要で外来受診当日に検査可能となっています。
- PSA検査(=前立腺特異抗原検査)は検査当日に結果が判明するため、スピーディーな前立腺がん検診と治療方針の決定が可能です。
- 画像検査では院内に320列マルチスライスCT、3テスラMRI、PET-CT装置があり、正確な病期診断に寄与しています。
- 尿路結石に対しては、体外衝撃波結石破砕術(ドルニエDelta2)とホルミウム・ヤグレーザー発生装置(Lumenis® Pulse™ 120H)、使い捨て軟性尿管鏡(LithoView、Boston scientific)【最新機種】による成功率の高い内視鏡結石治療が可能です。
- 前立腺肥大症に対しては、ホルミウム・ヤグレーザー発生装置による前立腺核出術(HoLEP)が可能です。
- 体腔鏡手術(腹腔鏡手術)を導入しています。
- 腎臓腫瘍、副腎腫瘍に対して体腔鏡手術(腹腔鏡手術)を標準術式としています。
- 体腔鏡手術(腹腔鏡手術)は体への負担が少なく短期入院も可能となっていますが、開腹による手術と比べると難易度が上がる傾向にあります。
- 岩国医療センター泌尿器科では日本泌尿器腹腔鏡技術認定制度認定医、および日本内視鏡外科学会技術認定医を取得した医師2名で、手術執刀もしくは手術監督を行うことで、偶発的な事故を未然に防止できるような手術体制を確保しています。
- 手術支援ロボット(da Vinci Surgical System)を導入しています。
- 転移がない前立腺腫瘍に対してはロボット支援前立腺全摘除術が可能です
- 転移がない腎臓腫瘍に対しては症例の状況に応じてロボット支援腎摘除術もしくは腹腔鏡下腎摘除術を行いますが,比較的小さな腎臓腫瘍に対してはロボット支援腎部分切除術を行い、できるだけ腎臓機能の温存ができるように配慮しています。
- 浸潤膀胱癌に対してロボット支援膀胱全摘除術を行っています。従来の開腹による手術と比較して低侵襲となっており、患者さんの安全と早い術後回復・早期退院に貢献します。
- 骨盤臓器脱に対してロボット支援仙骨膣固定術を行っています。
- すべての泌尿器科関連領域に対応しているわけではありません。不妊治療、男性更年期、ED治療、小児泌尿器科、透析医療、性感染症などは扱っておりません。
- 日本泌尿器科学会 教育認定施設になっています。日本泌尿器科学会認定指導医・専門医、日本泌尿器内視鏡学会 泌尿器腹腔鏡技術認定制度認定医、がん治療認定医、泌尿器内視鏡学会プロクター認定制度(プロクター)、ロボット外科学会専門医(Robo Doc certificate) (国内A級)が在籍しています。
手術実績
手術実績 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 |
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膀胱癌に対する経尿道的手術 | 102 | 83 | 103 | 115 | 115 | 121 |
レーザーを用いた手術 | 44 | 73 | 83 | 71 | 79 | 88 |
体腔鏡での手術 | 13 | 28 | 21 | 30 | 22 | 19 |
ロボット支援手術 | 93 | 75 | 78 | 101 | 99 | 139 |
うち前立腺腫瘍に対して | 82 | 66 | 65 | 76 | 70 | 101 |
うち腎臓腫瘍に対して | 11 | 9 | 12 | 12 | 6 | 13 |
うち膀胱腫瘍に対して | - | - | 1 | 7 | 11 | 10 |
うち骨盤臓器脱(膀胱瘤)に対して | - | - | - | 6 | 12 | 15 |
泌尿器科での受診から診察、治療までのながれ
泌尿器科を受診するにあたって「どんな検査をされるのかわからない?」といったご意見が寄せられることがあります。
しかし、尿に関わる症状をおこす病気の中にはがんや生活の質(QOL)を大きく落としてしまう病気が隠れています。
実際に岩国医療センター泌尿器科で行われる一般的な診察のながれをお示しします。
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「診察日は?」
初診は月曜・水曜・木曜でお受けしています。-
他院で診断を受け、当院で手術希望の方
主治医の先生から紹介状を作成頂けますと助かります。 -
当院への紹介状をお持ちの方
主治医の先生から当院地域医療連絡室を経由してご予約可能です。 -
紹介状なく当日受診希望の方
予約状況に応じて対応は変わりますが、受付にて予定診察時間をお知らせします。
お急ぎの場合には随時対応することも可能です。お気軽に電話でご相談ください。
尚、紹介状をお持ちでない方は、通常の医療費とは別に選定療養費7,700円(税込)がかかります。 -
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「来院したら?」
はじめに、問診を記載して頂き問題点を把握させて頂きます。より詳しく書いて頂けますと、お困りである点を中心に必要となる検査を早めに行えます。 -
「診察は?」
問診の結果から簡単な検査を選択し、その日のうちに検査結果をお伝えしたいと思います。
簡単な検査とは検尿、血液検査、超音波検査などとなります。
ここで候補となる病名をあげさせて頂きます。
その結果から、処方や対処法の提案をさせて頂いたり、さらに高精度な追加検査の提案をさせて頂く場合もあります。
外来診察時の医師指定は行っておりませんが、別の医師の意見が聞きたいなどの要望は随時申し出て頂いてかまいません。 -
「追加検査は?」
MRI検査、CT検査、PET検査などの高精度画像検査、膀胱鏡内視鏡検査、尿管内視鏡検査などを提案する場合があります。ある程度の体力的・費用面での負担などもありますので躊躇される方は申し出てください。 -
「手術などの治療が必要と判断された場合は?」
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他院への紹介やセカンドオピニオンなどの希望があれば、申し出てください。その時に希望される医療機関も準備して頂けますと紹介までの時間短縮につながります。
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当院での手術希望の場合には、診療科長から術前診察(手術にたえられるかどうか?)の評価のための診察があります。
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手術適応と考えられる場合には、患者さん本人だけでなく、ご家族の都合も交えながら手術日程の計画を相談させて頂きます。
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<連携医療機関>
岩国市内には当院の他に廣中泌尿器科(錦見、小武家誠院長)といなだ泌尿器科クリニック(今津町、稲田進院長)があり、当院と連携して診療にあたっています。総合病院受診に抵抗感のある方や、診察日などお困りの方はお気軽にご相談して頂ければ幸いです。
お問い合わせ
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平日(10時~16時)で泌尿器科メディカルアシスタントが対応可能です。
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よくあるお問い合わせは、入院・手術までの待機期間、入院期間、付き添いなどです。お気軽にご相談ください。治療内容や手術時期、手術までの待機人数によりお返事が異なる場合があります。
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明らかに診察に該当する内容や、本人確認と本人の同意が必要な内容の場合はお電話でお答えできません。
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スタッフ不在の場合、内容に確認を要する場合には、その場でお答えできないことがあります。折り返しご連絡いたしますが、日を改めさせていただきます。
「ダヴィンチサージカルシステム」について
ダヴィンチとは
ダヴィンチは、鏡視下手術を補助するロボット機能を持ち合わせた手術支援機器です。 山口県下では、山口大学医学部附属病院(宇部市)、徳山中央病院(周南市)についで、3施設目の導入となりました。
ダヴィンチのシステム
システムは「サージョンコンソール(操作台、下記写真(1))」、「ペイシェントカート(患者さんを手術するロボットアーム、下記写真(2))」、「ビジョンカート(術野を映し出す3Dモニター、下記写真(3))」の3つで構成され、術者は体内の3D画像を見ながら、手元のハンドルを使い、遠隔操作で手術を行います。
「ダヴィンチサージカルシステム」詳細ページ
その他、こんな病気も扱っています
- 尿路結石症について
内服治療で治る場合もありますが、比較的大きな結石の場合には手術が必要になります。
外来通院でおこなう「体外衝撃波による結石破砕術」や、入院し麻酔をかけておこなう「内視鏡によるレーザー治療」などがあります。 - 男性排尿障害について
投薬を初め、重症例にはレーザー治療などで治療を行うこと可能です。
女性の膀胱脱について
- 非常に多くの女性を悩ませる“おしも”の病気で、とくに更年期以降の女性にしばしば認められます。我慢されている方も多いようです。
気になる症状がある場合には、かかりつけ医から紹介受診や、当院泌尿器科メディカルアシスタントに「膀胱脱かも?」と、お気軽にご相談ください。
※上記、「お問い合わせ」も参照ください。
ロボット支援下仙骨膣固定術とは?
ロボット支援下仙骨腟固定術(せんこつちつこていじゅつ)(RASC:Robot-assisted sacrocolpopexy)は、骨盤臓器脱に対するロボット支援手術です。本邦では2020年に保険適用となりました。ほぼ全てのタイプの骨盤臓器脱(子宮脱、膀胱瘤、直腸瘤、腟断端脱など)に対して施行が可能です。
本手術の特徴
仙骨腟固定術は、狭い骨盤の深部で縫合操作を多用する手術です。手術支援ロボットを使用することで、1ミリ以下の精度で縫合操作が可能となり、より精緻な手術が実現できます。
再発が少なく安全性も高いことが示されており、最先端の低侵襲手術として患者さんへのメリットも多分にあります。
具体的な治療経過
手術はロボット支援による腹腔鏡手術となります。メッシュで臓器をつり上げます。手術時間は通常2-3時間で、手術翌日には食事も歩行も可能です。入院期間は約1週間です。
術後の生活で気を付けること
退院直後から日常生活に制限はなく、デスクワークなど体の負担の少ない仕事であればすぐに再開いただけます。ただし、重いものを持つような仕事は1ヵ月間程度は控えることを勧めています。
術後の生活で、メッシュが入っていることの異物感を感じる方はほとんどいません。また、メッシュそのものは手術専用の医療材料で、MRI検査や大腸カメラなど今後受けられなくなる検査があるわけではありません。
膀胱瘤をはじめとする骨盤臓器脱は治すことのできる疾患です。まずは専門医にご相談ください。
NCDの泌尿器科症例登録に参加しています
当科は、一般社団法人National Clinical Database(NCD)が実施するデータベース事業に参加しています。 この事業は、日本全国の手術・治療情報を登録し、集計・分析することで医療の質の向上に役立て、患者さんに最善の医療を提供することを目指すプロジェクトです。
この法人における事業を通じて、患者さんにより適切な医療を提供するための医師の適正配置が検討できるだけでなく、当科が患者さんに最善の医療を提供するための参考となる情報を得ることができます。何卒趣旨をご理解の上、ご協力を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
J-CaP研究会「前立腺がん患者の診断時の背景因子と初期治療および治療経過に関する実態調査研究」に参加しています
J-CaP研究会は日本における前立腺癌患者にとって最適なホルモン療法の指針を構築することを目的として、2001年より全国約400施設が参加して前立腺癌ホルモン療法の実態調査と治療成績の分析を行っています。
岩国医療センターだより 『泌尿器科』
過去に広報誌「岩国医療センターだより」にて掲載しました「泌尿器科だより」等、泌尿器科関連の記事を閲覧できます。
外来診療案内 泌尿器科
泌尿器科 担当医師の紹介
中田 哲也(なかだ てつや)/診療部長
◇役職/泌尿器科医長・ 診療部長、総合入退院センター室長 併任、統括診療部がんゲノム診療部がんゲノム診療室医師 併任、医療情報管理室長 併任
◇専門領域/泌尿器科、尿路悪性腫瘍、腫瘍免疫学、ホルミウムヤグレーザー手術、ロボット支援手術、女性骨盤臓器脱手術
◇卒年/香川大学医学部 平成11年卒、岡山大学大学院医学研究科 平成16年卒
▼資格等
- 岡山大学医学部医学科臨床教授
- 岡山大学大学院医学研究科博士学位
- 日本泌尿器科学会 泌尿器科指導医・泌尿器科専門医
- 日本泌尿器内視鏡学会 泌尿器腹腔鏡技術認定制度 認定医
- 日本内視鏡外科学会 技術認定医(泌尿器腹腔鏡)
- 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
- 身体障害認定医
- 臨床研修指導医養成研修会修了
- がん化学療法指導者養成研修会修了
- ダヴィンチSiトレーニングシステム修了
- 泌尿器ロボット支援手術プロクター認定制度 認定医(ダビンチ:膀胱・前立腺)
- 泌尿器ロボット支援手術プロクター認定制度 認定医(ダビンチ:副腎・腎尿管)
- 泌尿器ロボット支援手術プロクター認定制度 認定医(ダビンチ:仙骨膣固定術)
- 日本ロボット外科学会専門医(Robo Doc certificate) (国内A級)
- 緩和ケア研修会修了
- がんのリハビリテーション研修会修了
- 日本泌尿器内視鏡学会代議員
- 難病指定医
- 長時間労働医師への面接指導実施にかかる研修 修了
▼所属学会
- 日本泌尿器科学会
- 日本泌尿器内視鏡学会
- 日本内視鏡外科学会
- 日本癌治療学会
- 日本泌尿器腫瘍学会
- 日本ロボット外科学会
- 日本女性骨盤底医学会
高村 剛輔(たかむら こうすけ)/泌尿器科医師
◇専門領域/泌尿器科一般
◇卒年/岡山大学医学部
平成22年卒
▼資格等
- 日本泌尿器科学会 泌尿器科指導医・泌尿器科専門医
- 日本泌尿器内視鏡学会 泌尿器腹腔鏡技術認定制度 認定医
- 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
- 臨床研修指導医養成研修会修了
- ダヴィンチSiトレーニングシステム修了
- 泌尿器ロボット支援手術プロクター認定制度 認定医(ダビンチ:膀胱・前立腺)
- 緩和ケア研修会修了
▼所属学会
- 日本泌尿器科学会
- 日本泌尿器内視鏡学会
花本 昌紀(はなもと まさのり)/泌尿器科医師
◇卒年/岡山大学医学部
平成27年卒
▼資格等
- 日本泌尿器科学会 泌尿器科専門医
- 日本泌尿器内視鏡学会 泌尿器腹腔鏡技術認定制度 認定医
- 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
- 日本内視鏡外科学会 技術認定医(泌尿器腹腔鏡)
- 身体障害認定医
- 臨床研修指導医養成研修会修了
- ダヴィンチSiトレーニングシステム修了
- 緩和ケア研修会修了
▼所属学会
- 日本泌尿器科学会
- 日本泌尿器内視鏡・Dボティクス学会
- 日本癌治療学会
- 日本内視鏡外科学会
寺本 友真(てらもと ゆうま)/泌尿器科レジデント
◇卒年/岡山大学医学部
令和3年卒
▼所属学会
- 日本泌尿器科学会
池田 拳人(いけだ けんと )/泌尿器科レジデント
◇卒年/岡山大学令和4年卒
▼所属学会
- 日本泌尿器科学会