放射線治療について
放射線治療とは
放射線治療とは、医療用放射線を用いて、がんをはじめとする病気を治す治療法です。
医療用放射線は病院の検査に広く用いられていますが、放射線をより強力にして病気の部位のみに集中して使用することで、治療に用いることも可能となります。
強い放射線は体の中の細胞を傷つけてしまう作用があるため、無秩序な放射線を浴びると体に様々な不調をきたしてしまいます。しかしがん細胞のような異常に増殖してしまう細胞は、正常な細胞よりも放射線の影響を受けやすいという特徴があるため、放射線の強さや範囲を制御することで、正常な細胞のダメージを抑えつつがん細胞だけに強いダメージを与えて、がんを治療することが可能となります。とはいえ、がんを完全に治療するための放射線の強さでは、病気の周囲の正常な細胞へのダメージをゼロにすることは難しいため、治療部位に応じた副作用への対策も同時に行っていきます。
岩国医療センターで行う放射線治療
放射線治療には様々な種類の機械や手法がありますが、当院で行っている放射線治療は「リニアック」という機械を用いて体の外から放射線(エックス線、電子線)をあてる治療法です。
基本的に1日1回で月曜~金曜に毎日行う治療です。治療で行うことは台の上で寝ていただくだけで、寝ている間に体の周りをリニアックがゆっくりと動き、病気に放射線をあてていきます。
治療時間や必要な治療回数は病気の種類や病状、目指すべき目標(がんをゼロにすることを目指すか、痛みなどの症状の改善を目指すか)によって様々に使い分けており、1回あたりの治療時間は10分~30分程度、治療回数は短ければ1回、長ければ40回近い治療が必要になることもあります。治療を行っている最中に痛み等はなく、副作用が生じる場合は、数日~数週間をかけてゆっくりみられることが多いです。
また副作用は治療が全て終われば徐々に改善しますが、治療終了後にも長引きやすいものや、終了後になってから出てきやすいものもあります。治療前には必ず治療内容や副作用について十分に説明させていただいたうえで、治療を希望するかどうかを確認させていただいております。
脳の定位放射線治療について
当院では今年度リニアック装置を更新し、今までと比べより高精度の治療を行うことができるようになりました。代表的なものとして、「脳の病気に対する定位放射線治療」を新たに開始いたします。
【図1:リニアック:Varian社製True Beam】
脳はがんが転移しやすい臓器のひとつです。臓器によっては転移ができても症状は何もでないこともありますが、脳にできた転移は体の麻痺や感覚異常といった強い症状の原因となるため、すみやかな治療が求められます。一方で脳への手術は負担が大きく、また抗がん剤では十分な効果が望めない場合も多く、放射線治療が大きな役割を担っています。
脳転移への放射線治療法は、脳全体へ治療を行う「全脳照射」と転移の部分だけを治療する「定位照射」の大きく2種類に分けられます。
全脳照射は定位照射と比べ認知機能低下などの副作用のリスクが高まるため、転移の数が少ない場合はなるべく定位照射が望ましいです。ただ定位照射を行うには数mm~数cmの範囲でピンポイント照射を行うことのできる高精度な装置が必要となるため、今まで当院では行うことができず広島など遠方への通院をお願いしておりました。状態の悪い患者さんも多いなか大きな負担となっておりましたが、今後は当院であらゆる脳転移に対応できるようになり、憂いなく最適な治療を選んでいただけるようになります。
【図2:全脳照射と定位照射:左が全脳照射で、脳全体に一定量の放射線をあてています。
右が定位照射で、病変部のみに放射線を集めています】
【頭部シェル:治療精度を保つため、専用の固定器具を使用します】
治療法の選択について
当院で可能な治療の幅は大きく広がりましたが、今後も当院では行うことの難しい放射線治療(IMRT、腔内照射、粒子線治療など)はあり、病気によってはそれらが勧められる場合もあります。患者さんごとにどのような放射線治療が勧められるかは常に検討しており、他院への紹介が望ましいと判断した場合には、その都度説明させていただきます。
メリットデメリットをご理解いただいたうえで、患者さんそれぞれにとって最もよい治療を一緒に考えていければと思います。