低侵襲手術センター

センター長あいさつ
岩国医療センター低侵襲手術治療センターでは、患者さんにとって身体への負担が少なく、安全で質の高い医療を提供することを目的として、内視鏡手術やロボット支援手術を中心とした低侵襲治療に取り組んでおります。近年、低侵襲手術は、術後疼痛の軽減や早期回復、早期社会復帰など多くの利点から、外科治療において重要な役割を担うようになっています。当センターでは、胃外科、大腸外科、呼吸器外科、泌尿器科など内視鏡手術を行う各診療科が連携し、それぞれの専門性を活かしながら、安全かつ高度な医療を提供しております。
また、山口県東部地域の基幹病院として、地域完結型医療の中心的役割を果たし、地域の患者さんが安心して高度医療を受けられる体制整備に努めています。医療技術を導入するだけでなく、教育・研究活動や医療安全の向上にも積極的に取り組み、将来にわたり質の高い低侵襲医療を安定して提供できる体制を維持してまいります。
今後も、地域の皆さまに信頼され、安心して治療を受けていただける低侵襲手術センターを目指し、スタッフ一同努力してまいります。
低侵襲手術センター
『安全で質の高い低侵襲医療と、手術支援ロボット(da Vinci Xi)・先進機器のご紹介 』
<低侵襲手術センターの理念>
「患者さんの身体への負担が少なく、安全で質の高い医療を提供することを目的とする」
当センターでは、医療技術の導入にとどまらず、教育・研究・安全管理の向上に多職種で積極的に取り組んでいます。
低侵襲手術センターの活動・運営体制
低侵襲手術(傷口を小さくし、術後の痛みや全身への負担を抑える手術)を安定的にお届けするため、診療科や職種の枠を超えた全院的なセンター体制を構築しています。
- 職域を超えた緊密な意見交換: 各科医師、麻酔科医、手術室看護師、臨床工学技士(ME)が定期的に症例検討や安全カンファレンスを行い、トラブル防止と手技の向上を図っています。
- ダヴィンチ手術室レイアウトの集約化: 手術室内でのスタッフ動線の最適化、患者さんの安全確保、大型機器の迅速な搬入出を可能にする統一レイアウトを確立しています。
- 機材運用の効率化・安全点検: 共通手術器具や先端支援デバイスの効率的配備、専任チームによる徹底した保守管理を実施しています。
手術支援ロボット「ダヴィンチ Xi(da Vinci Xi)」の力
「開腹手術でなければ難しかった手術を、より低侵襲に。」
「腹腔鏡では難しかった手術を、より精緻に。」
―― 私たちは『低侵襲』の先にある、より高度な手術の提供を目指しています。
当センターの中核である「ダヴィンチ Xi」は、外科医の目と手の能力をデジタル技術で飛躍的に拡張する手術支援システムです。自律的に動くのではなく、熟練した術者が専用コンソールからリアルタイムに操作を行います。
| 機能・特長 | 技術的詳細 | 患者さんへの利点・効果 |
|---|---|---|
| 高精細3Dハイビジョン視野 | 術野を10倍以上に拡大し、奥行きのある立体画像を鮮明に映し出します。微細な血管や神経、組織境界を正確に識別可能です。 | 精密な剥離・切除が可能となり、不要な出血や神経損傷を大幅に回避します。 |
| 多自由度鉗子(EndoWrist) | 人間の手首の可動域を超える7つの自由度を持ち、狭い体腔深部でも自在に屈曲・回転します。 | 直線的な器具では届きにくい複雑な角度からの切除や、細やかな運針・縫合が確実に行えます。 |
| 手振れ補正(モーションスケーリング) | 術者の生理的な手の震えを完全にカットし、コンソールでの手の動きをより精密な比率(例:3cmの動きを先端1cmの動きに変換等)に補正します。 | ミリ単位の極めて繊細な手術操作が終始ブレることなく行え、安全性が向上します。 |
| 直感的な操作性 | 術者の視線と鉗子先端の挙動が完全に一致する直感的操作を実現しています。 | 無駄な挙動を抑え、出血量の低減と手術精度の向上につながります。 |
精密手術を支えるロボット支援関連機器・技術(全科共通)
当センターでは、ダヴィンチシステム本体に加えて術前・術中の各種支援デバイス・高度画像処理システムを連携させ、全診療科において安全性と手術精度の向上を追求しています。
① 術前シミュレーション:3D画像解析システム「SYNAPSE VINCENT®」
術前シミュレーションには、3D画像解析システム「SYNAPSE VINCENT®(富士フイルム株式会社の登録商標)」を活用しています。術前に撮影した造影CTデータを立体的に再構成し、患者さんごとに異なる細かな血管の分岐、標的臓器、病変の位置関係を正確に把握します。どの血管を処理し、どの正常組織や神経を温存すべきかを術前にミリ単位でシミュレーションすることで、手術時間の短縮、術中出血リスクの低減、術後機能の最大温存に直結させています。
② 太い血管や組織を安全に自動切離・縫合:ロボット支援手術用「SureForm®ステープラー」
手術中に太い血管や消化管などを安全に切り離し、同時に縫い合わせる器具として、ダヴィンチと連動する「SureForm®(シュアフォーム)ステープラー(インテュイティブ・サージカル社の登録商標)」を導入しています。ステープラー先端のスマートセンサーが組織の厚みを1秒間に1,000回以上測定しながら、最適な力で均一に医療用チタン製ステープルを打ち込みます。組織のつぶれや出血、術後の縫合不全リスクを大幅に減らし、安全で確実な止血・切離を実現します。
③ 術中超音波診断装置(ロボット用ドロップインエコー)
ロボット鉗子で把持できる小型超音波プローブを体腔内に直接挿入し、臓器の内部や表面からは見えない病変・血管の走行をリアルタイムに観察します。「SYNAPSE VINCENT®」による事前の3D把握と、術中のリアルタイムエコーを照合することで、病変の深さや切除境界を確実に特定し、安全な切除と正常組織の温存を実現します。
院内におけるロボット支援手術の実績
当院では、泌尿器科をはじめ消化器外科・呼吸器外科などが密に連携し、毎年多数のロボット支援手術を施行しています。
- 院内全体実績:年間200件以上のロボット支援手術を安全に施行
- 地域完結型医療の拠点: 山口県東部地域の中核病院として、高度で身体に優しい医療を安定して提供しています。
外科
概要
低侵襲手術センターでは、ロボット支援手術を中心とした低侵襲外科治療を提供しています。
ロボット支援手術は、術者の手の動きを忠実に再現する多関節鉗子と高精細3D画像を活用することで、従来の腹腔鏡手術では困難であった狭い空間での精密な操作を可能にします。その特長を生かし、重要な血管や神経を丁寧に温存しながら、根治性と安全性を両立した質の高い手術を目指しています。
当科は山口県東部で唯一の食道外科専門医準認定施設、日本胃癌学会認定施設、日本肝胆膵外科学会高度技能医修練施設です。胃・大腸の悪性腫瘍を中心にロボット支援手術を積極的に導入するとともに、胸腔鏡手術、腹腔鏡手術を組み合わせ、それぞれの患者さんに最適な術式を選択しています。
常に進化する医療技術を積極的に取り入れながら、安全性と治療効果を第一に考え、一人ひとりに最適な治療法をご提案します。地域の皆さまに安心して手術を受けていただけるよう、質の高い低侵襲医療を提供してまいります。
診療内容
食道外科
食道がんに対する胸腔鏡下食道切除術を行っています。拡大視野を生かした精緻なリンパ節郭清に加え、術中神経モニタリングやICG蛍光法を導入し、術後合併症の低減にも取り組んでいます。
胃外科
胃がんに対する腹腔鏡手術およびロボット支援胃切除術を行っています。病状や進行度に応じて最適な術式を選択し、ロボットの特性を生かした精密な郭清と再建により、安全性と低侵襲性を両立した治療を提供しています。
大腸外科
結腸がん・直腸がんに対する腹腔鏡手術およびロボット支援手術を行っています。特に直腸がんでは、骨盤深部での繊細な操作性を生かし、神経温存や肛門機能温存を重視した手術に取り組んでいます。
肝胆膵外科
肝臓・胆道・膵臓疾患に対して腹腔鏡手術を積極的に行っています。高度な技術を要する領域においても、患者さんの身体への負担軽減と安全性を重視し、適応を十分に検討した上で低侵襲手術を提供しています。
ヘルニア
鼠径ヘルニアに対して腹腔鏡手術(TAPP法・TEP法)およびロボット支援ヘルニア修復術を行っています。再発率の低下・早期社会復帰を目指して低侵襲手術に取り組んでいます。
担当医師の紹介
堀 直人(大腸)
内視鏡技術認定取得医(大腸)ロボット支援手術プロクター(大腸)
日本ロボット外科学会専門医(Robo Doc certificate)(国内B級)
小川 俊博(食道・胃・ヘルニア)
内視鏡技術認定取得医(胃)食道科認定医
大倉 友博(肝胆膵・ヘルニア)
消化器外科専門医
症例数




泌尿器科
ただ今作成中
<泌尿器科におけるロボット支援手術の方針>
当院泌尿器科では、前立腺・腎・膀胱の悪性腫瘍から、腎盂尿管移行部狭窄症や骨盤臓器脱といった良性疾患まで、幅広い適応に対してロボット支援手術(ダヴィンチ手術)を標準治療として積極的に導入しています。低侵襲手術センターの共通支援技術(3D画像解析システム「SYNAPSE VINCENT®」による術前シミュレーション、ロボット支援手術用「SureForm®ステープラー」、術中ドロップインエコー等)を駆使し、確実な病変制御と術後機能(排尿機能・腎機能・生活の質)の温存を両立しています。
主な対象疾患と適応術式
当科で実施している代表的なロボット支援手術です。悪性腫瘍に対する根治的切除から、再建・形成術に至るまで対応しています。
| 対象疾患 | 標準術式 | 手術の特長と期待される効果 |
|---|---|---|
| 前立腺癌 | ロボット支援前立腺全摘除術(RALP) | 狭い骨盤深部での繊細な神経温存剥離と精密な膀胱尿道吻合により、出血量を抑制し、術後の早期尿禁制回復およびQOL維持を目指します。 |
| 腎癌 | ロボット支援腎部分切除術(RAPN) | 術前シミュレーション「SYNAPSE VINCENT®」による血管走行把握と術中エコーを併用し、阻血時間を最短化して欠損部を迅速に縫合修復。腎機能を最大限に温存します。 |
| ロボット支援腎摘除術(RARN) | 根治的腎摘除を低侵襲に行い、周囲組織や太い腎動静脈の処理を拡大3Dハイビジョン視野下で安全・確実に実施します。 | |
| 膀胱癌 | ロボット支援膀胱全摘除術 + ロボット支援尿路変更(RARC) |
膀胱全摘除にとどまらず、回腸導管造設や代用膀胱形成などの尿路変更までロボット支援下に完全体腔内(ICUD)で実施。腸管の切離・吻合にはSureForm®ステープラーを活用し、開腹創を作らず身体への負担を劇的に低減します。 |
| 腎盂尿管移行部狭窄症 | ロボット支援腎盂形成術(RAPP) | SYNAPSE VINCENT®で尿路解剖を事前把握した上で狭小な尿路組織を精細に再建・形成し、極細の縫合糸による微細吻合を確実に行うことで、良好な通過性と早期回復を両立します。 |
| 骨盤臓器脱(POP) | ロボット支援仙骨腟固定術(RSC) | 狭い骨盤腔内でも強固かつ緻密なメッシュ縫合固定が可能となり、再発リスクの低減と早期社会復帰を実現します。 |
泌尿器科 ロボット支援手術件数の推移(2019年~2025年)
当科では2019年の導入以来、症例数を着実に積み重ね、安定した手術成績と治療体制を維持しております。
| 年次 | 泌尿器科 手術件数 |
|---|---|
| 2019年 | 78 件 |
| 2020年 | 101 件 |
| 2021年 | 99 件 |
| 2022年 | 139 件 |
| 2023年 | 111 件 |
| 2024年 | 136 件 |
| 2025年 | 123 件 |
【院内全体での高度手術体制】
当科の安定した実績(2025年:123件)に加え、外科・呼吸器外科等を含めた「病院全体でのロボット支援手術件数は年間200件以上」に達しております。地域完結型医療の拠点として、安全で身体に優しい医療を安定して提供しています。
患者さん・ご紹介いただく先生方へ
診断から手術適応の判断、術後のフォローアップまで、地域の医療機関の先生方と緊密に連携しながら安心の医療を提供いたします。ご紹介やご相談は、地域医療連携室を通じてお気軽にお問い合わせください。