ESDについてこのページを印刷する - ESDについて

歴史的背景

日本は胃がん大国ですが、先人のたゆまざる努力により、他国の追随を許さない診断技術と治療技術が開発されてきました。

特に1980年代に多田らのStrip biopsy法や平尾らのERHSE(Endoscopic resection with local injection of hypertonic saline epinephrine solution)法が発表され、内視鏡的粘膜切除術(Endoscopic mucosal resection: EMR)として広く国内で認知されるようになりました。
その後、手技的にも容易なEMRC(Endoscopic mucosal resection with cap fitted panendoscpe)法が井上らにより開発され、広く海外に認知されるようになりました。

しかしながら、いずれも最終的にスネアを掛けて切除する方法であったため、切除可能なサイズや部位に大きな制約がありました。この制約を克服するために開発されたのが、ESD(Endoscopic submucosal dissection:内視鏡的粘膜下層剥離術)です。
ESDはスネアを使用せず、電気メスで病変の全周を切開し、その後粘膜下層を剥離し、切除する方法です。これにより、理論上、大きさや部位の制約はなくなりました。

ESDは1990年代、小野らのITナイフの開発に端を発し、小山らのフックナイフ、矢作らのフレックスナイフ、豊永らのフラッシュナイフといった各種電気メスの開発、さらに新しい高周波装置の開発、山本らによる新しい局注液(ヒアルロン酸ナトリウム)の開発もあいまって急速に普及してきました。そして胃から始まったESDは、食道、大腸へと導入されていきました。

当科においては、2002年10月にITナイフを用いて、早期胃癌に対してESD第1例目を行い、以後現在にいたるまで、胃・食道を中心に、大腸ESDにも積極的に取り組んでいます。
 


【EMR; Endoscopic Mucosal Resection、内視鏡的粘膜切除術(2チャンネル法)】
 


【ESD; Endoscopic Submucosal Dissection、内視鏡的粘膜下層剥離術】

 

ESDの適応

早期がんが適応になります。具体的には

(1)胃がんの場合⇒
  a)分化型、粘膜内、潰瘍なしであれば大きさを問わない
  b)分化型、粘膜内、潰瘍があれば、3cm以下を適応にしています。未分化型については、粘膜内、潰瘍なし、2cm以下であれば症例によっては適応としています。

(2)食道がんの場合⇒
  深達度EP(m1)かLPM(m2)と診断された病変。

(3)大腸がんの場合⇒
  深達度が粘膜下層浅層までの大型病変で、一括切除が必要と診断された病変。

 

ESDの流れ

  1. 内視鏡検査(適宜NBI拡大観察、AIM撒布等を併用)やX線検査、場合によっては超音波内視鏡検査を行って、適応条件を満たすと術前診断された病変に対してESDを行います。
  2. 前日に入院していただき、翌日が手術となります。その後7日間入院となります。計9日間の入院期間となります。
  3. 手術は鎮静下に内視鏡センターで行います。手術時間は約2~3時間ですが、場合によってはさらにかかることもあります。手術当日と翌日は絶食となります。
  4. ESDの手順:色素撒布を行い、病変の確認⇒先端系ナイフによる切除範囲のマーキング⇒グリセオールないしはムコアップ(0.4%ヒアルロン酸ナトリウム)原液の局注⇒各種ナイフによる全周切開およびトリミング⇒各種ナイフによる粘膜下層の剥離⇒切除後潰瘍の血管の処理を行い、終了。

 

早期胃がんに対するESDの実際


A. 色素撒布を行い、病変の確認

B. フラッシュナイフによる切除範囲のマーキング

C. 約3/4周の切開およびトリミング

D. ITナイフによる粘膜下層の剥離

E. 切除潰瘍の露出血管をクリップにて処理

F. 新鮮切除標本

 

ESDの合併症

主な合併症として、穿孔(穴があく)と出血があります。

穿孔に関しては、約5%前後の割合で起こる可能性があります。
穴があけばすぐわかるので、その場で内視鏡的に閉鎖します。ただ、内視鏡的に閉鎖しても腹膜炎等が悪化すれば緊急手術になります。また穿孔すればその後の手術が困難になる場合が多く、中断して、後日あらためて外科的手術になります。

出血は術中出血と術後出血があります。
術中出血がひどい場合はESDの続行が難しく、中断し、後日あらためて外科的手術になります。
術後出血はまれですが、治療後7日以内はおこる可能性があります。もし出血がおこれば、緊急内視鏡を行い、止血術を行います。輸血が必要な場合もあります。

 

ESD後の治療方針

切除標本の病理学的検索を十分に行い、断端陰性かどうか、脈管侵襲がないかどうか、適応条件を満たしているかどうかを確認します。これにより治癒切除か非治癒切除か判定します。
非治癒切除と判定されれば、後日、追加治療(手術等)が必要となります。治癒切除と判定された場合は、定期的に内視鏡にて経過観察します。
また胃がんの場合、Helicobacter pyloriの感染が確認された場合には、可能な限り除菌療法を行います。

*胃がんの場合、粘膜下層浸潤でも浅く(筋板から500μ未満=SM1)、かつ3cm以下、かつ脈管侵襲陰性であれば、治癒切除と判定されます。

 

ESD症例数の推移



 

胃 ESDの実際(動画)

【早期胃癌、胃前庭部後壁、0-2a+2c、20mm】